星ピアス


猫の眼みたいだ、
大きくて少しだけつり上がってる。

色素の薄い、茶色の瞳で見つめてくる。

髪も猫の毛みたいにさらさらして、
なでると笑って目を細める。

抱きしめると僕のへそのピアスをさわって、
おへそになりたい、と言う。

僕はその意味がいまいちよくわからない。

僕のへそになって、どうしたいんだろう。

好きな人の一部になりたい気持ちはわかるけど、
それってへそなんだろうか。

僕だったら、彼女の耳になりたい。

黄緑色の星がついた、彼女の耳。

彼女の中で特に大切にされてる場所。

彼女の中でひときわ可愛い場所、目立つ場所。

「じゃあ俺は耳がいい、耳になりたい」

どうして、変なの、って彼女は言う。

へその方が変だろう、って思う。

すぐにすねるから言わないけど。

「俺の愛の言葉が聞こえるから」

彼女は笑う。

自分の言葉なんて恥ずかしくて死んじゃうよ、
そう言って笑う。

変なの、って言って笑う。

「俺が耳になったら、聴きたくない言葉は
 聞こえないようにふさいであげるよ。
 俺の愛の言葉だけ聞こえるようにしてあげる」

また彼女は笑う。

じゃあずっと、死ぬまで、幸せでいられるね
そう言って笑う。


僕が耳になったらさ、
ほんとうの気持ちを聞いてほしい。

もちろん、愛の言葉といっしょに。

ほんとうは幸せにする自信なんて
これっぽっちも欠片もないんだ。

本当も嘘もわからなくて
すべて壊してしまいそうでこわいんだ。

でも笑ってくれるから
僕のくだらない言葉を聞いて
可愛く笑ってくれるから
僕はきみを抱きしめていられる。

くだらない冗談を言いながら
きみを幸せにしたいって思えるんだ。