目を閉じて見える世界


出会いはいつだって突然だった。

同じように、別れもいつだって突然だった。


目があった瞬間をいつだって思い出せる。

初めて手をつないだときや
キスしたとき、本気で怒ったとき
初めて目の前で泣きだしたときのこと
きっといつになっても
きのうみたいに思い出せると思うんだ。


きのう僕が見た夢を
同じように、きみも見れたらいいのに。
今までぼくが見てきたものを
きみに見せられたらいいのに。
あのときの音や色や味も匂いも
感じた気持ちと暑さと風も。

きみが見てきたものや感じた気持ちを
ぼくも感じることができたらいいのに。
そうすればきっと、
このさききみが何かを経験したときに
感じることをぼくも理解することができるだろう。

いっそ生まれた瞬間から
いっしょだったらよかったのに。
そうすればきっと、
出会いも別れもないけれど
食い違うことも傷つけることもなかったよ。
同じものを見て同じように感じて、
同じものを食べておいしいと言って笑えた。


モノクロの世界できみに触れれば
温かいと感じることができたんだ。
色も風もないはずの世界で、
きれいだと思えたんだ。
気持ちいいとかおいしいとか
そんなことさえ感じられたんだ。

きみがいるだけで
味も匂いも優しさも、
嫉妬だってちゃんとわかった。


どうして別れなんてあるんだろうか。

出会ったままじゃいられないのかな。
誰かと別れなくちゃ
新しい誰かには出会えないのかな。
大切なものが増えていって
すべてを愛する、大切にするなんて無理なのかな。
誰かを愛せないぶん、
違う誰かを愛せるのかな。


色も味も失くしてしまった世界でも
またきれいだとかおいしいだとか
そんなふうに思えることができるんだろうか。