キャラメルコットン


初めて見たのは確か
イチの学校の文化祭に行ったときだった。

彼女はイチの隣を歩いていて
それはもしかしたら
ただの友だちだったかもしれないのに
あたしはちゃんとわかった。
あのひとがそうだ、って
彼女なんだって
ナナさんなんだって
わかってしまった。


すれ違うだけでわかる
むせかえるほどの甘い香り。
香水だとかそんなものじゃなくて
それはきっと彼女のものだった。

キャラメルみたいだと思った。

声も髪も瞳もすべてが甘くて
とろけていきそうだった。
風で揺れる髪がきれいで
笑ったときの頬が
やわらかそうでかわいかった。

いつだってきらきら輝いて
うらやましいなんて
そんな言葉じゃ足りないくらいだった。

どんなに背伸びをしても
届かないところにいて
眩しすぎて
見るのがつらいくらいの
そんな存在だった。


1と7
馬鹿みたいだよ。
そんなの子供みたいだよ。
でもわたしには運命みたいに思えて
うらやましくてしょうがなかった。



彼女はイチを傷つける。
でも、だれよりもイチを幸せにする。
彼女の声ひとつで指ひとつで
もしかしたら一瞬のまばたきで
イチをどきどきさせたり苦しめたりする。

そんなの、かなうわけないよ。
もうわかってたことだけどさ。


馬鹿みたいだよ。
ねえずっと夢の中にいるみたいだよ。

どうして駄目だってわかってるのに
嫌いになれないんだろう。
せめてふつうの友だちに
どうしてなれないんだろう。

ねえどうして
あたしは想いを捨てられないの。

ねえあたしだけ
いつまでも進めないよ。